Macと印刷の関係
iPodやiPad、iPhoneと様々な人気製品を擁するapple。そのアップルの作るパソコン、Macintosh(Mac)は、パソコンとしてのシェアは10%以下です。ですが、マッキントッシュ使いとウインドウズ使い、そのシェアが逆転している業界があります。それが印刷業界です。印刷業界に限っては、マッキントッシュのシェアは9割ほどといわれています。
なぜ印刷業界ではマックなのでしょう。DTP黎明期、コンピューターを使って印刷物を作る、その目的を叶えるためのソフトが、マッキントッシュ専用のものだったのがやはり大きな原因です。印刷物の編集や入力などを行うためのDTPソフトは、今はもちろんウインドウズ用のものも販売されていますが、このシェアの逆転は当分起こりそうにありません。
マックのコンセプトは、もともと印刷ととても相性の良いものでした。そもそもマッキントッシュは、コンピュータグラフィックスの描画性能に重点が置かれて設計されました。
そして、フラッシュプレーヤーやPDF閲覧では定番となっているアドビリーダーを作っている、アドビシステムズが開発した規格のひとつである「PostScript」がそれを実現可能なものにします。「PostScript」とはプログラミング言語のひとつで、マック登場の前にあったアップルのコンピューターで使われていたプリンターから採用されたものです。ジョブスは高度な印刷を可能にしたいという悩みがあり、その悩みを解決するための方法がPostScriptだったのです。また、アドビはもともと、「PostScript」をDTP目的で開発したのです。ですから、PostScriptを採用したマックと、DTPの相性がいうのは当たり前だったのです。
例えば、モニター上に1センチの円を描写するとします。Macは、そのモニターに見えるままに印刷したい、そういう考えが根底にありました。モニターで見たままのものを、印脱結果にする、今では当たり前の事ですがこのWYSIWYGを最初に実現したのがマックです。今でもイラストレーターや漫画家など、絵を描く仕事をされている人にMacintoshが人気なのは、そうしたコンセプトあってのことだったのです。
パソコンのプリンターを例に考えると、印刷を扱う業種では、Postscript対応のレーザープリンターを使っているのが普通です。Postscript対応のプリンターは、プリンター内部にハードディスクを持ち、プリンターそのものに、プログラミング言語を実行させるという仕組みです。今はパソコンとプリンター間の通信速度そのものが上がってきていますから差は縮んできていますが、Postscript対応のフォントを使って大量の文字を印刷すると、Postscript非対応のフォントを使って印刷した場合に比べて驚くほど早くプリントアウトすることが出来ます。このマックパソコンとPostscriptを繋ぐのはイーサネットです。まだ都内でもISDNでインターネットをしていた時代、マックにはすでにLANポートが標準装備されていたのです。
今では、ウインドウズパソコンとマックの性能は、それほどは違いません。ですがそれだけ、印刷業界ではマックが愛され続けているのです。